今後、アニメやマンガ業界で省力化のため制作過程にAIを導入する場面が増えるだろう。その際クリエーターは「創作プロセスを記録しておくこと」が重要だと木村氏はいう。「創作的寄与」があると第三者に分かるよう記録することは、著作権を主張する場面で自分の身を守ることになるからだ。
意外なトラブルに要注意!
昨今、著作権侵害と関連して名誉毀損を巡るトラブルも増えている。
「例えば、ある作品について『他の作品の盗用ではないか』と第三者や作品の著作権者がSNSで投稿したものの、実際には著作権を侵害していないケース。この場合、疑惑を掛けられた側がSNSに盗用だと投稿した側を名誉毀損で訴えることが可能になる。こうしたトラブルは個人間でも事業者間でもよくみられ、実際に判決もある」
また、木村氏は「自分の作品の著作権が侵害されていると考えた場合、SNSに投稿するのではなく、まずは問題の作品の作者に直接クレームを伝えるのが賢明だ」と言い、こう続ける。
「2つの作品を見比べて、感覚的に似ていても『非侵害』となるケースがある。一般的な感覚よりも著作権法上の〝類似性の範囲〟は狭い。被告作品の創作者が『原告の作品を無断で参考にした』と述べたにもかかわらず、裁判所は『非侵害』とした判決もある」
現行の著作権法では保護されない画風やアイデアは、作品の核を形成していることも多く、クリエーターの頭を悩ませる問題だろう。しかし、著作権の問題に関してセンシティブになりすぎることは、クリエーティビティーを阻むことにもなりかねない。
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だといわれる。既存の作品を「真似る」ことでクリエーターがスキルアップしたり、既存の作品からインスピレーションを受け、新たに創作した作品が名作に昇華されることもある。その意味で、真似には効用があると言っていい。ただ、そこから名作にできるかは難しいバランスの上に成り立つアウトプットだ。だからこそ、権利についての知識を身に付けるとともに、クリエーター同士がリスペクトし合うことがさらに重要になっていくだろう。